――歳は?
『14』
――だいぶ経つな、当時何歳だった、
『……。12、あんたとはじめて会ったのは10』
――残念だけど、あの組織は無いし、俺はもう、マグマ団でも無いんだわ、
『……聞いた』
――そうかい、しかし、生きてたとは、
『おれを覚えてる人間が全くいない、あんたは、おれが生きて見えるの』
――まだ死んでは無ぇだろ、
『確かに…、墓はあるけどな』
――運の良いガキだよ……お前の存在はウチが欲しい、
『あんたしか知らない』
――可愛い事言いやがって、
『他は……知らない』
――ふ−ん、しかしよく逃げたな、どこへも見つからずに、
『騙す』
――騙す?
『自分すら……、自分がもう存在しないと思えば簡単だ』
――だがもう限界、だろ、そろそろ生き返らせてやろうか、
『え…?』
――お前、別の人間になれるか?
『ここにいても、いいのなら……何でも』
――うん、いいぜ、いずれはマグマ団へ世話してやってもいい、
『本当に……!』
――待て待て、ただし条件がある、
『条件……、おれは何でも、あんたの言う通りにする』
――そうか! 良かった、どっちにしろ今日お前を帰すつもりはなかったぜ、ホムラ。
『……ホムラ?』
――そのままの意味さ、ホムラ、
お前は今日から、“おれ”になるんだ。
よりにもよって、“それ”かよ!
高笑いされた記憶が甦る。
性悪な大人の事なんだから自分善がりに決まってる。
助けて貰おうなんて、無理だった……。
ホムラ「どこまで歩かせる気だ」
*「…。」
ホムラ「何を笑ってやがる…気色悪い」
*「会わない間に忘れた?こういうカオなのさ」
男はよく笑うが、感情という熱は無い。
生まれ持って無いのだ、と思う。
過去、男はアクア団でもありマグマ団でもあった。
当時を知る者は、失脚したはずの男の返り咲きを目にし、二つの団の頭文字からアクマの亡霊と呼んだそう。成るほど確かに悪魔だ、今なお黒い闇の底に居座り、そこから人間を誘い込んで思い通りに堕落させては楽しんでる。
各地へ張り巡らせた糸の先に括りつけた手下達を“悪魔の駒”と言うらしい。
この男のため、夜な夜な資金を集めていた移動遊園地の“魔術団”。
かつてその首領であったバトラーも、そうだった……。
男は暗い森を、歩いて行く。
どうやら目的があるらしく、それは森を抜けた場所で開けた高台だった。
ホムラ「チッ……キンセツ、お前の根城か」
*「そう。もっとこっちへ来い、俺の街を見せてやる……!」
ホムラ「どこだよ、ここは!」
*「シダケの、山中」
ホムラ「テメェ、回りくどいんだよ! さっさと街へ連れてけばいいだろ」
*「その前に、是非上から見てほしくてだな――ほら、下を見ろ、ネオンだ」
高台から見下ろせば、キンセツシティの輝く夜景が広がっていた。
再開発をして、あの寂れた街が、まるで城塞のような巨大施設へと生まれ変わった。
たった10年程で。
*「何とでもなるだろ、ホムラ」
街の再開発に深く関わった人物が、この男である。
*「地下開発のニューキンセツ計画は潰された。しかし、地上へ築いた……!」
そういえば、再開発完了の式典の日だ。
だから、迎えに来たのか。
見計らったように黒の車がやってきて……男は、そのドアを開いた。
*「魔都へ」
つづく