奇跡のチョコ



その@ 【それは夢かとおもったです byホカゲ】


ホカゲ「なん…だと…!」


ホカゲは、驚愕してた。
驚愕、しすぎて、いた。
なにせ自室のドアを開いた、そのすぐ下に、ちょこんと……

ふんわり淡いピンクの小さなギフト(恋ピンクと恋パープルのリボンつき) ▼

ホカゲ「本日二月十四日」

ホカゲ「まじか。えー。まじか」

バレンタインのチョコが、プレゼントされていたのでアルー……




そのA 【食堂で、バンナイくんに報告しました byホカゲ】


バンナイ「ぷは。 どいつのイタズラだよ」


胸いっぱい。キラキラと目を輝かせ報告したホカゲに対して、バンナイは冷たく嗤っただけだった。


ホカゲ「Σなんつーことを! これは奇跡のチョコなんです!」
バンナイ「いやいや、あんたね。組織の事情分かってんでしょ、頭では…」
ホカゲ「あたまー?」
バンナイ「現在におけるマグマ団、男しかいないんだよ…」
ホカゲ「Σふえ! 考えないよう、思考回路を全て閉じてたのに!!」
バンナイ「……あったんだ、思考回路」
ホカゲ「Σ失敬な!」

プンスカ怒るホカゲ、笑って謝るバンナイ。

バンナイ「まあ…。義理チョコだろうけど、義理チョコだろうけど、義理チョコだろうけど、義理チョコだろうけど、義理チョコだろうけど、やっぱり義理チョコだろうけど、…どんまいなホカゲさん」

ホカゲ「Σもう飽きた的な畳み掛けよう的な冷たさ!」
バンナイ「飽きたってか、元より興味ありません〜」
ホカゲ「Σ義理でもいい、おれは嬉しい!」
バンナイ「はいはい。良かったねホカゲさん」
ホカゲ「それでバンナイくん、チョコは?」

バンナイ「は?」

ホカゲ「は? じゃなくてー」
バンナイ「え、ちょっと意味わかんないんだけど…」
ホカゲ「チョコ、レート」
バンナイ「えーと、ハイ?」

ホカゲ「お世話になってます&いつもありがと的なチョコを、おめーはナイのか」

バンナイ「Σ全マグマ団にお世話されてるホカゲさんに言われるとは驚き!」

ホカゲ「ないのかー」
バンナイ「はいはい、無いよ。お仕舞い!」

マツブサ「ん――チョコないの?」

ホカゲ「おお! マツブサ!」
バンナイ「マツブサさん、ナイスタイミング。チョコはないですよ」

マツブサ「やっぱり今年もマツブサにチョコは無し!」

ホカゲ「何年やるんだこのくだり」
バンナイ「下っ端とかからさ…、一個も無いんですかマツブサさん」

マツブサ「ウン。今年も団員ちゃんから一個も無いんだよねートホホ」

ホカゲ「やっぱりナイのか」
バンナイ「さすがマツブサさん、お可哀想に…」

マツブサ「スミマセン。何だろう、今年は何だか否定のパンチ力が足りないよ」

ホカゲ「ホムラがいねーな」
バンナイ「マツブサさん否定部隊の、一番隊隊長が不在だね!」

ホカゲ「ホムラは寝坊か?」
バンナイ「まさかでしょ。今日はまだ見かけてないよー」
ホカゲ「やっぱり寝坊か?」
バンナイ「……」

マツブサ「もう仕事してるのかも! マグマ団は、ホムラくんありきです!」

ホカゲ「それなー」
バンナイ「ホカゲさん、ぼけっとしてないで見習えよ」
ホカゲ「バンナイくんからもチョコがないと、無理です」
バンナイ「だから無ぇ、つってんだろ!」




そのB 【実は、自室でぐったりしていた… byホムラ】


ホムラ「くそ…」


数時間前――。
朝の散歩帰りに、具合が悪くなりマグマ団・医務室へ。

マグマ団のお医者さん「インフルエンザですね」

ホムラ「…そうか」

マグマ団のお医者さん「だいたい一週間、外出禁止で…す

ホムラ「…は?」

マグマ団のお医者さん「Σひえっ も、申し訳ございません…!」

ホムラ「い、っしゅうかん だと…?」

マグマ団のお医者さん「経過を見ながら、とにかく薬を…」

ホムラ「ここで、予防接種したはずだ」

マグマ団のお医者さん「あれとは〜… ち、違う型でした…」

ホムラ「テメェ…」

マグマ団のお医者さん「 」

ホムラ「しょうがねぇ…休みにする」

マグマ団のお医者さん「お、お大事にです…」


発症から一気に悪化して、ふらふら自室へ戻りました ▼




そのC【けっこう苦しい… byホムラ】


ホムラ「まさか…俺がな、いったい、どこから…」

♪ ポケナビ着信。

ホムラ「やべ… 博士か。ダルい…」

――コンコン (ノックの音)。

ホムラ「いま、…出る」

ホムラはよろめきながら、玄関へ ▼




そのD 【ドアを開けると、バトラーが立っていました】


バトラー「大丈夫?」

ホムラ「すまない…、犬を預かってくれ」
バトラー「可哀想に…とりあえず、モンスターボールごと預かるね」
ホムラ「ああ…」
バトラー「他に、用はあります…?」
ホムラ「ない…」
バトラー「…あの」
ホムラ「とりあえず、頼む」

ガチャ (扉は閉じられた) ▼

取り残されたバトラー「……頼ってよ。」




そのE 【全国ポケモンリーグ結果速報 byホウエンTV】


――食堂のTV。

マリ『おはようございます、ホウエンTV、インタビュアーのマリです』

アダン先生『ホウエンの皆さん、ご機嫌麗しゅう』

マリ『今朝のコメンティエーターは、ルネジムのアダン先生です』

アダン先生『タハハハ! 新刊、美少年だより――発売中!』

マリ『まずはルネ族おなじみ、著書の宣伝からですね』

アダン先生『勿論なのです。瑞々しくたわわな美少年図鑑を堪能して下さい』

マリ『バレンタインデーの朝から耽美パワーをありがとうございます』

アダン先生『勿論なのです。よき耽美を』

マリ『さて! 今年のポケモンリーグも結果が出ました。とにかく、激戦でしたね!』

アダン先生『ノン! それは地方によりますね』

マリ『てきびしい〜!』

アダン先生『やはり、まずはセントラルから…』

マリ『セキエイ高原のリーグ結果からですね!』

アダン先生『セキエイリーグは非常にレベルと質の高い試合でしたね』

マリ『やはり今年もチャンピオンはワタルさん! ドラゴン軍団、凄まじかったです』

アダン先生『彼、素敵ですよね』

マリ『はい! え?』

アダン先生『気にせず、続けて?』

マリ『そして、我らがホウエン・リーグの速報です!』

アダン先生『タハハハ。ホウエンリーグは、今年もまたツワ… ゴホッ、ゴホゴホ』

マリ『Σアダン先生、大丈夫ですか。おいしいみず、カモン!』

アダン先生『失礼しました、タハハハ。チャンピオン、今年も大活躍でしたね』

マリ『チャンピオンさん、今年もTVの顔出しNGなんですよね〜…』

アダン先生『ところでホウエン・チャンピオンが戦闘中につけてたアイテムですが…気づきましたか?』

マリ「ああ、あれですね〜!」

アダン先生『デボン・チャンピオン・バングル…。はぁ、ため息がもれます…素敵なアイテムでしたね』

マリ『わかります〜! やっぱりデボン、デボン、デボーン製品日本一♪』

アダン先生『タハハハ』

マリ『デボン製品、だ〜ぁいすき♪』

アダン先生『さて、バレンタイン。デボンのロゴを模ったチョコが〜…』


この後、ひたすらスポンサーのデボン商品について語るホウエンTV ▼




そのF 【洗脳型・怪電波なので、TV消しました byマグマ団】


ホカゲ「さすがホウエン。チョコまでデボンに支配されている」

バンナイ「この電波つかったホウエン洗脳、こえー…」
マツブサ「デボンチョコね、僕も買っちゃったよ〜!」
ホカゲ「おお! マツブサ!」
バンナイ「自分で自分に…」
マツブサ「ハッピー・デボン、ハッピー・バレンタイン♪(CM歌曲)」
ホカゲ「それ、くれ」
バンナイ「へえ、綺麗じゃん。一個下さい★」

マツブサ「Σや、やだよお…!」




そのG 【トウキさんからメッセージ】


ホカゲくんへ。
今年もシバから“いかりまんじゅう”が大量に届いたんだ…。

だから、おすそ分け!
というか、助けてくれ…。死ぬほど届いた…。
それと、

“ムロチョコ”も送るぜ!

友チョコを男の友人間でも送ろうっていう、ムロ発祥の企画だよ。
というわけで作ってみました。
良かったら食べてくれ! へへへ!
ムロチョコ、ビッグウエーブになりそうな気がする!

 トウキより  (P.S またあそぼう!)



ホカゲ「お。ポケナビにメッセージ届いてた…トウキさんから」

バンナイ「毎年健気じゃん…そろそろ付き合っちゃいなよ」
ホカゲ「Σおお! 日付、一昨日だった…」
バンナイ「あらら…今年も空振り感スゲーな」
ホカゲ「お、おれはどうしたらいいんだ…」

バンナイ「そうね…、いかりまんじゅう頬張りながら『おれも食べてよ』って色っぽく言ってる動画でも送ってあげたら?」

ホカゲ「? なぜだ。わからん」
バンナイ「アホカゲちゃん。鈍感も、いい加減にして」

マツブサ「その動画、詳しく……!」

ホカゲ「マツブサよ、前のめりすぎるぞ」
バンナイ「マツブサさん、落ち着いて。血圧上がるよ!」




そのH 【チョコが無ぇ byホムラ】


もっと時を巻き戻して、本日早朝のこと▼


ホムラ「やべ。なんか調子悪ぃな…」

日課の散歩をしていたホムラの身体に不調の兆し。
グラエナやポチエナが心配そうに見上げてくる。


ご近所、フエンジム前でいったん休憩 ▼


ホムラ「…。(風邪だろうか?)」

アスナ「今年も バレンタイン おめでとう ございまーすッ!!」

ホムラ「Σ頭に響く!」
アスナ「Σギャ! マツブサさんの所の顔恐いお兄さん!」
ホムラ「おい。会うたび驚くな、いい加減慣れろ」

アスナ「あの、今年もチョコ配ってるんです…良かったら、おひとつ貰って下さい」

ホムラ「そうか、2月14日。毎年すまない…」

アスナ「あ、マツブサさんのおうちって何人家族でしたっけ…?足りるかな?」

ホムラ「気を、使うな…」
アスナ「Σだだ、だ、だめ、だだだ だめですよッ!!」
ホムラ「声がデケェ」
アスナ「そうだ! マツブサさんの分を届けてもらえます?」
ホムラ「マツブサ? 断る!」
アスナ「Σ厳しい断言!!」


結局、受け取ってあげたホムラだったが…帰宅後 ▼


ホムラ「やべえ、朦朧としてきて、チョコをどこぞに落したかもしれねぇ…」


アスナからの、マツブサ宛のピンクのチョコ包み ▼


マツブサ宛のピンクのチョコ包み ▼


マツブサ宛の…… ▼


ホムラ「……知るか」


考えるだけで疲弊するので、ホムラは寝床に横たわり、目を閉じた。




そのI 【マツブサさんへ byアスナ】


ホカゲ「奇跡のチョコをオープンしてみて、びっくりです」

バンナイ「何で? フエンのジムリーダーからじゃん!」
ホカゲ「マツブサ、どういうことだ」

マツブサ「アスナちゃん、確かに毎年個別で用意してくれてるんだよね〜」

ホカゲ「じゃあなぜ、おれの部屋の前に…」
バンナイ「ジム遊びに行って、聞いてみれば?」
ホカゲ「むりだ。ホカゲはショックで動けません…」
バンナイ「自分宛じゃなかったから」

ホカゲ「ア、アスナサンが…、くそう!マツブサばっかり贔屓されやがって」

マツブサ「なんかごめんね、まあほら、義理ですよ義理、ハハハ」

ホカゲ「こ、こんなうつくしい包装の、チョ、チョコを頂くなんて」

バンナイ「やめなよホカゲさん、男の嫉妬は醜いよ」

バトラー「Yes, ニホンのSt.バレンタインDay 大変ですネ」

バンナイ「そうそう、チョコの恨み節……って、博士!」
バトラー「私もチョコレートを用意したのですが、出番が無くて…」
ホカゲ「ん? チョコ? くれるのか、博士」
バンナイ「Σあ、  あ…(たぶん、博士の手作り、やばいやーつ)」
バトラー「どうぞ皆さん、とろけるスイート・バレンタインを!」


ジャーン! (フシギな泡と煙がたってるチヨコレイト) ▼


ホカゲ「なんすかこれ」
バンナイ「なんか、生き物?」
マツブサ「ケモノノ臭いのなかに、こんぶダシの臭いが交差する…」

バトラー「No, そんなものは入れてません! 君たちは、失礼だ!」

ホカゲ「Σ理不尽に怒られた」
バンナイ「待って……!」
ホカゲ「へ?」

バンナイ「え、まさかだけど…今日…ホムラさんの姿を見かけないのって」

ホカゲ「へ??」
バンナイ「バトラーさん、何かご存知でしょうか?」

バトラー「ホムラくんでしたら、急に具合が悪くなったそうで」

ホカゲ「へ???」
バンナイ「Σ死因は、これか!?」
ホカゲ「Σ死んだかー!?」
バンナイ「一服盛られたか…」
マツブサ「てことは〜すでに、こちら召し上がったのかな?」
ホカゲ「まじで? ホムラ、ダイジョブ?」

バトラー「Σあの! ホムラ君でしたら体調不良ですよ。今日はお休みを取ると言ってました」

ホカゲ「Σしんだ」
バンナイ「ホムラさんの免疫ぶっ壊れたのか! 魔性のチョコ」
マツブサ「てろる・ちょこれーと」

バトラー「Σち、違います! 彼、病気です。ずいぶんと具合が悪そうで、詳しくは聞けなくて…」

ホカゲ「Σビョーキ!」
バンナイ「Σウィルス!?」
マツブサ「Σ え、っと」
ホカゲ「えーと、おれ、トウキさんからの荷物を受けとらんと!」
バンナイ「俺も〜。フエン煎餅屋を、からかいに行かないと〜!」
マツブサ「Σ え、っと」

バトラー「どうか、話を聞いて下さい……」


バトラー博士は、涙目 ▼


ホカゲ「きゅん…」
バンナイ「やべ、綺麗…。やべえ、凄い綺麗な表情、そそる…」

マツブサ「不思議とこの地獄チョコも、博士と一緒で美味しそうに見えてきますね…」

バトラー「舌の上でとろけます…非常に、甘かったですよ」


唇をいやらしく舐めてみせる博士 ▼


ホカゲ「いってみようか」
バンナイ「やらいでか!」
マツブサ「ひ、ひとくちくらいは…ね? 死なないよね?」

バトラー「さあ、私の…食べてよ」

ホカゲ「Σこれか、これを動画でやれってことか!」
バンナイ「今の博士の見ちゃったら、ホカゲさんじゃなあ〜…色気がねぇから」

マツブサ「いただきましょう!」




二月十四日、午前十一時。


マグマ団リーダー・幹部、全員ダウン。


一週間の全体休暇となりました。





おわり