王者B



ポケモン・ジャーナルの取材陣は大いに焦っていた。


果たしてどうだろう今日一日…

出だしの王者対談からまさかの緩々で、

四天王を増員して四人になった後半なんて、

ただのトレーナー雑談会と化してしまっている。

ポケジャのモットーは、トレーナーのバイブルである事。

この由緒ある雑誌が、全国ネットで井戸端会議の内容を書くのか。

もうこれ以上、彼らを脱線させてはならない!

…ポケジャ、ついに投入した。

[PWT] [PWT] [PWT] [PWT] !!!!

この状態を打破するためスタッフが一斉に"PWT"と書かれたカンペを掲げた。


このPWT、実はこれこそ本日のキー・ワードなのだ。


ワタル「おっと。本題だ、本題いくぞ!」

ダイゴ「そうそう。何喋るんだっけ」

ワタル「PWTだ、PWT!!PWTッ!!!台本読めーッ!!!!」

「ああ〜!」と、ニッコリ笑ったダイゴが手を打った。

ダイゴ「まことしやかに囁かれてたPWTも、ついに公のものとなるんだね」

ワタル「非常に、楽しみだ」


四天王のシバ「…」

四天王のカゲツ「…」


PWT効果か、ここにきて、チャンピオンふたりのトークはカチっとかみ合った。

ワタル「出るよなツワブキ」

ダイゴ「そのつもりだね」

その"PWT"というモノについて楽しげに語り始めたのだが、

逆に…先程までイキイキしてた四天王達の表情がシュンと曇った。


ワタル「北のシロナの提案も、ようやく実を結んだわけだが…」

ダイゴ「彼女こそPWTの発案者なのに、今日は呼ばなかったんだね」

シロナというのは、北の地・シンオウリーグのチャンピオンである。

ワタル「そうだ、シロナ呼べよ!何で対談相手がツワブキなんだ、理解出来ん」

ダイゴ「それは僕らの方が、互いの間に緊張感あるからだろう」

ワタル「そうか…」

ダイゴ「そうだね…」

ワタル「フン、よくも考えついたなポケモン・ジャーナルめ」

ダイゴ「まあまあ。それにさ、ワタル君」

ダイゴは微笑んでワタルをなだめた。

ダイゴ「兼ねてから、僕ら二人に"リクエスト"があったんじゃない?」

ワタル「リクエストォ〜?オレとお前の対談にか!?」

ダイゴ「そう。ワタル君と僕との、この並びって貴重だからね」

ワタル「二度は無ぇからなツワブキ…」

ダイゴ「敵同士と君は言うけど。今日は存分に話せて良かったよワタル君…」

ワタル「お、おう…」





ここで"PWT"の説明をしておこう。

PWTとは、"ポケモン・ワールド・トーナメント"の略。

全世界規模を想定しているポケモン・バトル大会だ。

エントリーに厳しいルールを設けているポケモンリーグとは別もので、

PWTは実力ありきだが、一般でも簡単に参加できるトーナメントらしい。

シンオウ地方のチャンピオン・シロナが長年提案し続けたプロジェクトで、

現時点で強さの頂点とされる各ポケモンリーグのチャンピオンの、

更にその上を魅せる至高のバトルを、楽しんで展開させようというのである。


当初、PWTは国内では認可されなかったため、

海外であるイッシュ地方に本部をつくり企画を進めたようだ。

交渉を重ねポケモンリーグからの協力も得ると、ついに開催が決まった。

全世界規模の、バトル・フェスがスタートするのだ。


出場者は、一般枠を勝ち抜いて条件を満たしたトレーナー、

そして世界各地のポケモンリーグ所属のトレーナー。

強者同士、一切のしがらみ無しのフル・バトルをするのである。

PWTの開催期間は、オール・シーズンを予定としてるが、

最も目玉のトーナメント、王者達の集う"チャンピオンズ"は、

主にポケモン・リーグのオフシーズンに行われる予定である。


そんなPWTとは、まだ存在自体が非公開であり、

一握りの関係者にしか情報を提供していない。

にも関わらず、『凄い事が起きるらしい…』という、

やんわりとしたPWTの噂はすでに巷に洩れ始めている。

まさに夢のよう。最強トレーナー同士のぶつかり合いが、

こんな一同に観れる場面はかつて無い事である。

またチャンピオンはじめ世界の強豪トレーナーにとっても、

フル・バトルをするという機会は滅多に無いため、

PWT開催宣言の日は全世界に衝撃を与えるだろう。


そして、その来るべき"PWT・情報解禁日"のために用意されるのが、

本日のポケジャ"PWT王者対談企画"だったのである…。


ダイゴ「PWT…無制限バトルが出来るのは、喜ばしい事だね」

ワタル「PWT…ひとえにシロナの執念だな、感謝する」

そう、夢のようなPWT。

チャンピオン達には、しっかりと語って頂きたい取材陣一同なのであった。


当初シロナが、PWTをやりたいと言いだした時、

シンオウリーグをはじめ、国内のポケモンリーグは『NO』と答えた。

世界各国で展開されるポケモンリーグという大組織の中で、

この地方は勝った・ここは負けたと優劣つけられるは困るからという、

オトナの事情によるものだった。

トレーナー心情とは間逆の答えをリーグ協会につき付けられたが、

シロナは諦めなかった、『国内リーグは無理!』と判断し、

個人的に繋がりのある海外のイッシュ地方へ渡り、

その地の有力者を集め、PWT開催のためイッシュ・リーグと話をまとめたらしい。


ワタル「各地方のバランスなんぞ関係ねぇ、オレらは自由だ!

ダイゴ「わー、熱いな」

ワタル「熱いだろ」

ダイゴ「となると…今後の世代のトレーナーは皆、海外へ行ってしまうかもだね」

ワタル「海外か…ヤバイな」

ダイゴ「そう、海外。PWT開催地のイッシュを皮切りにして…

ワタル「まさにベストウィッシュ。イッシュ地方とは、願いの叶う土地だな」

ダイゴ「え …プ。

ワタル「Σな、何故笑ったツワブキ」

ダイゴ「失礼、驚いた。ワタル君、唐突にそういうの要らないから」

ワタル「てめぇツワブキ!PWT、てめぇを一回戦で負かすッ!!」

ダイゴ「上手く当たれると良いね、ベストウィッシュ!」


ついでのデコピン! ☆ミ


ワタル「Σア!!」


なんというダイゴの不意打ち!

本日二回目!!

再びおデコにピシャっと喰らったワタルはカッとなって立ち上がった。

ワタル「おッ前そろそろ殴るぞ… ん?」


カゲツ「まあ…楽しそうでウラヤマっすよ…」

シバ「全く許せん…貴様等」


そこでワタルはようやく気づいた…、

自分達の並びの両端に座る四天王達から、

ひたすら恨めしい目を向けられている事に。


ワタル「何をテメェら、シケた面してやがる。PWTに舞い上がれよ」

ダイゴ「四天王も何か喋りなよ…まあ沈む気持ちとは思うけどさ」

ワタル「ハ?」

ダイゴ「あれ、まさかワタル君は知らないのかい」


カゲツ「ワタルさんさ、俺ら四天王は"出れない"んだが、どうお考え?」

シバ「PWT、四天王は招待すらされて無い」


ワタル「ハッ 嘘だろ」

ポカンとした顔で、ワタルはシバを見た。

シバは無言で頷く…いや、目がキツイ。

これ、結構怒ってるぞ!

ワタル「おい、ツワブキ…マジか?」

ダイゴ「そのようなんだけど…知らなかった?」

ワタル「Σ知らなかったっ!!」

ダイゴ「PWTの特別招待は、各地方のチャンピオンとジムリーダーのみだよ」

そう、チャンピオンとジムリのみ。

シバやカゲツたち四天王は見事にPWTにハブられたのだ。

ワタル「Σなぬ! お前(シバ)も、お前(ハゲ)もかハゲ!?」


カゲツ「俺ら四天王って、結構ポケモンリーグ損してる訳よ」

シバ「考えてみろ…理不尽ながら一番代えがきかないのが四天王だ」





PWT開催において、四天王は哀れだった。

実は四天王、本当にPWT招待リストに載ってない。

PWTに参加が認められて無い、唯一のトレーナーなのだ。

誰もが見たがる無限のトーナメントが"チャンピオンズ"。

"ジムリーダーズ"だってジムバトルでは見せない本気モードがある。

これに予選突破した無所属のトレーナーが加わって、

最強トレーナーを決める戦いが行われるのだ。

…しかし、"四天王"は。

ポケモンリーグ協会、四天王だけはPWTに売らなかった!

PWTの噂を聞きつけ、浮上していた四天王たち。

しかしいつまで経っても彼らに招待状は届かなかった。

『四天王は呼びません、呼べません、スイマセン』

これが現実。

PWTは一体全体どれほど四天王を落胆させ、絶望させたのだろう。

なぜ四天王は、NGなのか。


勿論、PWT最大の目玉であるのはチャンピオンズである。


そしてジムリーダー達も。

地域密着型のリーグ・トレーナーであり、

ジム・バトルのほか様々な活動を手広くやっている。

人気者も多く、いわば各ポケモン・リーグの入り口、顔である。

そんな彼らはPWTの日々の集客にはもってコイだ。

ジムリーダーどんどん来て下さいと、PWTは彼らの参加を積極的に促している。


…では、四天王は。

リーグ所属のトレーナーで最も代えがきかないのが四天王なのだ。

ジムリーダーには、代理や次候補が必ず控えている。

チャンピオンも、万が一の場合はポケモンリーグを欠場できる。

(その場合、四天王を突破したチャレンジャーが出れば、

不戦勝で新チャンピオンに就任できる。)


ただし四天王だけは、欠けてはならない。

四天王が4人揃わないアクシデントがあると、

チャンピオン選定が不可能でポケモン・リーグが開催できなくなるのだ。

四天王は厳しい。

年間の成績で頻繁にメンバー入れ替えがあるのだが、

ひとり欠けた際の、急な繰り上げ採用が難しいのである。

四天王から外された者は、運営側と激しく衝突するか、

大半は黙って立ち去ってしまうという。

やたらとプライドが高い者が多いので、"誰かの代わりに"が通用しない。

そのため四天王だけは、事故やら不祥事やらがおきかねない未知のPWT、

リーグ協会から『出陣はNG』となった訳なのである。





カゲツ「とりあえず第1回PWTは、黙って観戦すっからシクヨロ」

シバ「恨み言はキリが無いが、チャンピオン達のトーナメントは楽しみだ」

カゲツ「Σんなッ!」

あっさりとしたシバのコメントに、カゲツがガーンとショック受けた。

カゲツ「この場でもっと抗議せんとダメっしょ!」

シバ「しかし俺たちは四天王という立場に身を置いてる訳だからな…」

カゲツ「真面目っすね。まあ俺も、ホウエンリーグは大事だけどサ…」

シバ「よく言ったカゲツ、四天王こそポケモンリーグの"柱"なのだ」

カゲツ「四本の巨大柱だろ!…おいポケジャ、今んとこしっかり書けよ!」

シバ「四天王は勝手が多いと誤解をされてるからな、良い機会だ、ぜひ書け」


せめてもの腹いせかポケジャ使って四天王の株上げするつもりだ。


ワタル「Σお前ら、そこで適度に折れるからナメられんだぞポケモンリーグに!」

ダイゴ「ワタル君が四天王だったら、辞めて一般枠から出場しそうだね」

ワタル「なぬ」

ダイゴ「だって、無理やり勝手に押しかけ、出場しちゃいそうじゃない」

ワタル「ありえん事もない。バトルあるとこに、トレーナーあり!」

ダイゴ「そういう純粋な心情って良いよね、僕もチャンピオン辞めようかな」


 カゲツ「Σえ!またすか…困るんだけど」


ワタル「だから!僕"も"ってのヤメロ!!」

ダイゴ「だってトレーナーとは、縛られず、自由であるべきだからね」


 シバ「貴様らに限っては自由が過ぎる」

 カゲツ「あ〜…、ああいうチャンピオンだとお互い苦労するよな」

 シバ「する。」


ワタル「ツワブキ!気安くチャンピオン辞める〜とか言うんじゃねぇ!!」

ダイゴ「へえ?ワタル君、いつもと言ってる事が逆じゃない」

ワタル「Σう…!?」

ダイゴ「だっていつもはさ、僕にチャンピオン辞めろと促すじゃないか」

ワタル「王者として、お前の心構えが斜めってるからだ」

ダイゴ「君の場合は、真っ直ぐだよな。いろいろと突き破りすぎだけど」

ワタル「お前のその、趣味でチャンピオンしてますーって態度が許せん!」

ダイゴ「だって趣味だからね」

ワタル「本気でやれよ!」

ダイゴ「君がやればいいじゃない」

ワタル「オレはやるッ!お前もやれッ!!」

グッと、ワタルがダイゴの胸倉を掴み寄せた。

ワタル「浮ついた心構えでやってんなら、辞めちまえ!」

ダイゴ「また逆に一転、辞めろと言うんだ?」

ワタル「ああそうだ、辞めちまえ!」

ワタル「辞めちまって、実家のデボンでも継いでノホホンと暮らしとけッ!」

ワタル「ツワブキのせがれの、ダイゴくん!!」

ワタル「…そんで週末は、へぼな小石でも集めてろ!!」

ダイゴ「!」

カチーンときた。

ここでダイゴも、ワタルの胸倉を掴み返した。

ダイゴ「君ってトレーナーするためだけに生きてるのか?」

ワタル「ア?」

ダイゴ「君に対して言いたいのは、自分中心で世界が周るんじゃないって事」

ひとつめ!

ダイゴ「自分の意見を押しつけるなって事」

ふたつめ!!

ダイゴ「あと、そろそろ僕の事は姓でなく名前で呼…

最も大事なダイゴのみっつめだったがワタルが遮った。

ワタル「悪ぃツワブキ、お前がマジでむかつくから横ツラ一発殴っていい?」

ダイゴ「逆だろ、ワタル君。お前の考え方がむかつくから僕が殴る」

ワタル「ハ?オレが先に一発殴…

ダイゴ「まあ黙って。あとで一杯驕るよ…


 バキッ


王者ふたり、ほぼ同時に互いの頬に拳を入れた。


ワタル「マグレに入るな…」

ダイゴ「ワタル君には★って見えた?」

ワタル「…ツワブキ。お前こんなキャラじゃねぇだろ」

ダイゴ「…なんか、君に対しては譲れないものがあるんだよね」

ワタル「奇遇だな、オレもだぜ」

ダイゴ「初めて君に会った時、…本当に僕とは真逆だと思ったんだ」

ワタル「同じく。お前とは一生わかり合えんだろう…実直に、嫌いだ!」

ダイゴ「フフフ。しかしさぁ、殴り合いまでする必要はあったかい?」

ワタル「殴っただァ?お前のピヨピヨ〜パンチなんぞ、頬撫でられたも同然ッ!」

ダイゴ「いや大人げない行為をしてしまったよ…殴り殴られただなんて」

ワタル「デボンのボンボンめ。そら、デボンのオヤジがドヤしに来るってか!?」

ダイゴ「来るわけ無いでしょ、発想がくだらないなぁ」

ワタル「フフフ…」

ダイゴ「ハハハ…」

ワタル「フッフッフ…!」

ダイゴ「ハッハッハ…!」


やっぱり王者二人、不敵に笑って対峙した。


ワタル「ツワブキィ。お前とは、いずれ決着を…」

ダイゴ「では、その日まで互いにチャンピオンで在ろうじゃないか…」

ワタル「ほほう。貴様の口から聞けるとはな、嬉しいぜ」

ダイゴ「因縁って事で、今日この場で結ばせて貰ったよ」


王者二人は、まだ始まらないPWTすら通り越して、

いつの日か果たす決戦の約束を、(結構本気で)…した。





ところで喧嘩の最中、サロンの隅へ退避した四天王ふたりだったが、

目線で火花散らすチャンピオン達を後目に、アフター計画立てていた。


シバ「今日は一泊していくのか?」

カゲツ「そーそー、このホテルに部屋とってんよ。…どっか飲み行こうぜ」

シバ「ヤマブキなら店は幾らでも」

カゲツ「さすがァす都会…☆…つーか首都だったな」

シバ「何を食う?」

カゲツ「そりゃあ…チャンピオンに訊いてみて…」

そこでチラリと王者達に視線を送ってみたのだが、

ワタルもダイゴも相変わらずだったので、もう放っておく事にした。

シバ「出ようか」

カゲツ「スね。…ジャーナルさん、良い記事書いてな。また宜しくス」

シバ「おつかれ」

カゲツ「じゃあな、王様ご両人」


そしてしばらく…だいぶ時間が経ってから。


ちょっと腫れてきた頬を押さえてワタルが尋ねた。

ワタル「あ? …そういや、シバの奴はどうした!?」

ダイゴ「気付かなかった?先、帰ったよ」

ダイゴの頬もヒリヒリ痛そうだ。

ワタル「Σえ、このオレを置いて!?」

ダイゴ「そうそう。で、僕らはどうする?」

ワタル「ハ」

ダイゴ「この後どうする…?」

ワタル「二度繰り返すな、どうもしねぇよ 帰れ消えろどっか行け帰れ

ダイゴ「ワタル君って…。」

ワタル「な、なんだよ」

ダイゴ「やれやれ。君が帰るんだよ、僕はこのホテルに部屋があるのだから」

ワタル「へー。そうなのか良い御身分じゃねぇか、ここのロイヤルだろフーン」

ダイゴ「まさか、…部屋来たい?」

ワタル「Σイヤ結構ッッッ」

ダイゴ「だよね!全力の拒否だとは傷つくなぁハハハ」

ワタル「Σじゃあ泊まろか!?泊まってやるよ覚悟しろ!!」

ワタルが勢いよく乗り出すと、ダイゴは一瞬固まって身を引いた。

ダイゴ「え…ごめん、いらないかな」

ワタル「そ…そう」


強制終了となって、王者の対談は幕を下ろした。

しかし本日、ポケモン・ジャーナルはひとつ閃きを得た。

…チャンピオンってのは、喧嘩をするのか!

PWTについてのコメントは大部分が不足だったが、

代わりがとんでもない収穫物だったようだ。

そして急ピッチで編集が執り行われた。





翌週。

ポケモン・ジャーナル紙の最新号が発行された。

それは"PWT"開催を全世界同時発表するレセプションと連動した日取りで、

人気チャンピオンズのスペシャル・インタビューが掲載されると、

大きく話題をよんだ。

ショッキング・ピンクとメタル・ブルーが競って燃える帯のアオリ文は、

最・強・解・禁! - 最狂ライバル vs 最恐ライバル -

そしてポケジャ史上、前代未聞のド派手で過激に仕上がった表紙…!

黒の礼服姿の二大メジャー・チャンピオン本人達が、互いのその横面に、

本気でショットを撃ち入れた衝撃のクロス・カウンター像であった。


"チャンピオンが、戦う!"

全世界が、PWT開催に熱狂した。


そして同日、イッシュ地方で開催された、

PWT開催イベントに出席した両者の頬は、

ワタルは右頬、ダイゴはその左頬を腫らした姿であった。


記者1「ガチ殴りだったのか…」

記者2「うわっ。チャンピオンさんたち…随分と痛そうですね!」

記者3「殴り合いに発展した経緯を教えて下さいよぉ〜!」

ポケサン記者「険悪ですか?」


ワタル「ア?! ブッ飛ばすぞテメェ、気安く話しかけんなッ」

ダイゴ「いいや全然痛くなんてないから、僕ら一緒に撮るなよむかつくなハハハ」

ワタル「チッ…喋ると痛…Σ全然、痛くねェッ!!!」

ダイゴ「強情だな。湿布でも貼りなよ、見苦し…

ワタル「Σダセェッ!! 湿布ッ 貼らねェッ!!」

ダイゴ「ハハハ面倒くさいなお前」

ワタル「Σウルセェェェ!!オメェッッッ!!」





【時が過ぎ…最果ての田舎、ホウエン地方、フエンタウン】


彼らは、ようやく手に入れる事ができた。

ホカゲ「発売から2週間遅れで入荷したなフエンのド田舎よ」

ホムラ「こっち回ってきただけマシじゃねぇか」

バンナイ「凄いねー、ワタルさんって本当に世界の偉人だったんですね」

ド田舎住まいの彼らが一生懸命まわし読みしてるのは、

ちょっと前に、全世界を駆け抜けたポケモン・ジャーナルである!

マツブサ「あ〜。PWTですか。で… ここで戦うのは、ポケモンなの?」


幹部達『…。』


ホムラ「マツブサ」

ホカゲ「マツブサよ、決まってんだろ」

バンナイ「え、トレーナー同士じゃないの?」

ホムラ「ポケモン」

ホカゲ「むしろ人類vsポケモン」

バンナイ「ワタルさん勝つでしょ、口から破壊光線出るもんフスベ人」

ホムラ「…ポケモン」

ホカゲ「ポケモンポケモンうっせーぞ、ホムラよ」

バンナイ「マツブサさん、あんた ちなみにどっち派ですか?」

マツブサ「Σえっ!!…え、どっち派とは?」


広告とは、その効果が絶大である。

PWT、巷ではしばらく…一体これが何の大会なのか、

実際にワタルとダイゴがリング上で戦うのではとあらぬ噂が広まった。

PWT=ポケモン・ワールド・トーナメント

のちにポケモン・バトル大会だという事が正式に判明して、

人々の妄想と関心は若干、…薄れた。



ワタル「Σアー何?! じゃあマジで戦うかッ オレが勝つ」
 (※出典:朝刊ポケ日)


ダイゴ「野蛮だな。でも嫌いじゃないし、僕も勝つ」
 (※出典:夕刊ポケ日)


ワタル「僕も〜…って何だ、僕"も"って!!」
 (※出典:週刊ポケ7)


ダイゴ「ん。ひらがな」
 (※出典:週刊ポケME)


ワタル「…"な"行か」
 (※出典:月刊ポケンポケン)


ダイゴ「いやどう考えても、"ま"行でしょハハハ」
 (※出典:週刊ポケサン)


ワタル「ア。」
 (※出典:シルフカンパニー本社正面・巨大広告)


ダイゴ「君の事、良いと思うよ」
 (※出典:デボンコーポレーション本社正面・巨大広告)



そんな世論を知ったチャンピオン達は、新聞・雑誌・広告看板を私用し、

結局、開催直前までありとあらゆる紙面を使って喧嘩してたという。


何はともあれ、PWT、開催おめでとうございました。





おわり





※【ワタルと大誤算の会話】リクエストありがとうございました…☆